鐘とチョコレート

「ここから見える人たちは皆んな、嘆いたりわめいたり 平凡な暮らしの幸せまるで気づいていない」(陽ざしの中へ/劇団四季)


大学生になったら、フランスに旅行に行くのが夢だった。エッフェル塔やルーブル美術館は去ることながら、ノートルダム大聖堂に行きたかった。ノートルダムの鐘でカジモドが見た景色を見てみたかった。


2020年。コロナ禍で始まった大学生活。海外旅行はおろか、見聞を広げる旅すらはばかられる時代となった。


高校生活は吹奏楽に捧げた。これといった時ではないが、音楽練習室にいるはずなのに東風を感じたり、白浪がざー、ざーとなる音を何度か聞いたことがあった。多分、これが「文化」的な物にはまったきっかけだったのだろう。

他のものでも、この小宇宙を感じたい。

そう思うのに、そう時間はかからなかった。


「僕ならそんな毎日大事にする」(陽ざしの中へ/劇団四季)


ーーーーー黄色いヒナギクをみた。


俺にも、見えるかな。チョコレートコスモスと言う、小説を読んでふと心が揺れた。「演劇?何それ。」みたいな感じだ。ただ、一瞬やりたいと思った。戸惑った。でもやってみることにした。こんな時代に学生生活を送ったのだから、やりたいと思ったらやらなきゃいつかじゃできなくなる。そう思ったのかもしれない。才能なんてない、でもやりたい。


いつか行きたいと思っていたノートルダム大聖堂は大火事でその美しいステンドグラスを失った。それがまた、なかなか動こうとしない自分の背中を押したのかもしれない。挑戦出来る日々を大事にしないといけないと。


蟹井和弥