学生の移動手段の変化は面白い。
小学生では徒歩圏内であった世界が、中学生になり自転車を手に入れるとどこまでも行ける気がした。
高校生になり電車を利用する様になると世界の大きさを知った。
大学生になって、車に乗るようになると、それまで大きく思えていた自分がとてもちっぽけで取るに足らないもののようにも思えてくる様になった。
私は劇団の稽古場への移動手段に電車を使っているのだが、帰りの電車は常にくたくただ。
その日の疲れと共に、演劇のコツといった何かこれと言ったものが全然わからなくて、やつれた顔が車窓に映るのもしばしばだ。
そんな時、Mr.Children「1999年、夏、沖縄」と言う曲が思い出される。
「生まれた場所を離れ 夢からも遠くそれて 嗚呼僕はどこへ辿り着くのだろう 今日も電車に揺られ車窓に映る顔はそうほんのちょっとくたびれているけれど」
と言う歌詞が頭をよぎるのだ。
ただ、今の私は分かる。
そこに居るのはちっぽけな凡人なのだということを。
ひと昔前のように自分が大きい存在とは思わない。
だから、努力は続けなくちゃいけない。だって、そうだろ。自分がやりたいと思った道なんだから。
「1999年、夏、沖縄」の終盤にMr.Childrenの桜井さんはこんな歌詞を添えている。
「選んだ道とはいえ 時に険しくもあり 些細なことで僕らは泣き笑う」 、と。
蟹井和弥